介護・福祉業
多様で柔軟な働き方にあった就業規則等の整理と労働時間管理
介護は、高齢者等の利用者を介護する職業ですので、人間の労働力に依存する割合が大きい産業であり、それだけに労務面でも、各種の配慮が必要になってきます。介護業界では、慢性的な人手不足の状態が続いており、正社員のみではなく、非常勤労働者などをうまく活用していかなくてはいけません。また、シフト制や夜勤が多く、労働時間が不規則になりがちです。このように多様で柔軟な働き方に合わせた労務管理や、労働時間の適切な管理が事業者の大きな課題となります。 そのため、労働実態にあった就業規則の整備や労働時間管理が重要になってきますが、複雑な労働規制について、専門家のアドバイスは必須といえます。
セクハラ、パワハラ対策
また、介護現場は利用者との関係や同じ職場内での人間関係など、対人関係が密接で、心理的なストレスが高い環境であるため、パワハラやセクハラの発生リスクが高まります。これらの問題は、従業員のメンタルヘルスの問題を引き起こしたり、職場の雰囲気を悪くし、結果的に離職率の増加や労働力不足を引き起こすことがあります。公益財団法人介護労働安定センターによる令和5年度「介護労働実態調査」結果でも、介護労働者が直前の介護の仕事を辞めた理由は、「職場の人間関係に問題があったため」が34.3%で最も多く、その具体的な理由としては、「上司の思いやりのない言動、きつい指導、パワハラなどがあった」(49.3%)が約半数を占め、「同僚の言動(きつい言い方・悪口・嫌み・嫌がらせなど)でストレスがあった」(38.8%)も上位でした。また、ハラスメントによって労働者が、メンタルをやむなどした場合には、加害労働者だけではなく、事業者も「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」義務(安全配慮義務)に違反したものとして、休業損害、慰謝料、逸失利益などの損害賠償請求を請求されるリスクがあります。このような事態を生じさせないためにも、ハラスメント研修の実施や、相談窓口の設置、さらには万一ハラスメントの可能性が発生した場合の適切な対応方法の構築などが重要であり、これらの対策には専門知識を有する弁護士を活用することが有益といえます。
カスハラ対策
近年非常に大きな問題として注目されているカスタマー・ハラスメント(カスハラ)への対応も必要です。介護を受ける側は、自分の体が自由に動かせないことへの不安や、介護への依存に対する心理的抵抗を抱えており、また家族も介護費用の負担や介護サービス内容などへの不満を抱え、それが職員への過剰な要求や攻撃的な態度につながる原因となります。パワハラ、セクハラという純粋に職場内の問題とは異なり、事業者にとっては契約者である利用者やその家族との対応という問題も含んでいますが、「お客様は神様です」という発想のみで適切な対応をとらなければ、従業員の精神的・身体的な負担を増加させ、離職やメンタルヘルス不調につながるリスクがあり、また前記のパワハラ等の場面と同様に、事業者自身が安全配慮義務違反として損害賠償を請求される可能性があります。このようにカスハラ対策も労務管理の重要な課題といえます。
外国人労働者の雇用に関する法務対応
慢性的な人材不足への対応策として、介護分野では、外国人労働者の雇用が増えていますが、在留資格に基づいた適切な職務内容や労働条件の設定が必要です。技能実習生や特定技能の在留資格で介護業務に従事することは可能ですが、実際の業務内容が在留資格に合致しているかどうかを確認しなければなりません。業務範囲を超える仕事をさせた場合、不法就労に該当し、事業者が罰せられる可能性もあります。

