飲食業
飲食店経営者が注意すべき労働問題と予防策
飲食業界は人材不足が深刻化している業種のひとつです。慢性的な長時間労働やシフト管理の煩雑さ、アルバイト比率の高さなどから、労務トラブルが発生しやすい環境にあります。実際、労働基準監督署による是正勧告や労働審判に発展するケースも少なくありません。また、慢性的な人材不足への対応として、外国人労働者に依存する店舗も増えていますが、言語や文化の違いも相まって労務トラブルは複雑化しています。
飲食業界に多い労務トラブル
(1) 長時間労働と残業代請求 飲食業界では「営業時間が長い」、「人員不足」という要因から、長時間労働が慢性化する傾向があります。その結果として、問題化しやすいのが残業代の未払い請求です。
(2) アルバイトの雇止め アルバイトを含む非正規雇用者が多い飲食業では、解雇や雇止めをめぐる紛争が発生することも多いです。「シフトに入れない」「能力不足を理由に契約更新しない」といった対応が、実質的には不当解雇や不当な雇止めと判断されることがあります。能力不足であることを証明するのはかなり難しいため、改善指導記録などの客観的資料を残すなどの対応も必要です。また、長期にわたって勤務し、契約の更新が繰り返されている場合などは、裁判所は「雇用継続への合理的期待がある」とし、雇止めを無効とすることもあります。そのため、安易な雇止めは危険であり、専門家である弁護士に相談して慎重に手続きを進める必要があります。
(3) パワハラ・セクハラ 上下関係があり、人間関係が密接な職場環境である飲食店では、店長や先輩スタッフによるパワハラやセクハラがトラブル化することもあります。
(4) 外国人労働者をめぐる問題 日本経済のグローバル化や労働力不足に伴い、飲食店でも多くの外国人労働者が活躍しています。厚生労働省の発表では、令和6年に飲食サービス業で働く外国人労働者の数は約22.9万人であり、外国人労働者の約10%を占めます。彼らは今や、店舗運営に不可欠の存在です。しかし、外国人労働者を雇用する際には、日本人従業員とは異なる注意点があります。外国人労働者を雇用する際に、まず確認すべきは「在留資格」と「就労の可否」です。在留資格の範囲外で就労させた場合、事業者に刑事罰や入管法違反の行政処分が課されますので、注意が必要です。
ア.在留資格の確認 在留カードやパスポートで、在留資格、在留期間、就労可否の記載を必ず確認しましょう。「就労不可」と記載されている外国人を雇用することはできませんし、自社の業務内容と在留資格で定められる活動内容がマッチしていない場合は雇えません。
イ.就労時間の上限
ウ.雇用契約書・労働条件通知書の交付
まとめ

以上の通り、飲食店に多い労働問題は、次のとおりです。 ・残業代請求
(1) 労働時間を客観的に管理する シフト・打刻・実労働時間を一致させる 片付けや賄い時間も含めて記録
(2) 契約書・規則を整備し、外国人には母国語説明を徹底すること 固定残業代は「対象時間数・算定方法」を明記 雇用契約書を必ず交付し、外国人には母国語翻訳や口頭説明を加える 雇用契約更新時は「自動更新ではない」旨を明示
(3) ハラスメント防止体制を整えること 指導とパワハラの境界を研修で明確化 苦情窓口を設け、労働者が相談しやすい体制を整える
(4) 解雇・雇止めは慎重に進めること 能力不足を理由にする場合は、改善指導記録を残す 外国人労働者に対しても、母国語説明を行い、誤解を防ぐ
労務トラブルを未然に防ぐことが、結果的に人材の定着と経営の安定につながります。もし対応方法に不安がある場合や既にトラブルが生じている場合は、早めに弁護士にご相談ください。飲食店の実情を理解したうえで、最適な解決策をご提案いたします。
